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Un ange passe〜 天使が通る 〜 チャチャさん、最近の僕……何か、変です。
胸の奥がズキンと熱くなって、そして……なぜかそういうときに限って、あの《バカ犬》リーヤの顔が浮かんでくるんです。
笑ってください。
僕……チャチャさんを想うあまり、そのチャチャさんとずっと一緒に過ごしてきたリーヤが、ちょっぴり羨ましいのかもしれません。
馬鹿みたいですよね。
確かに、チャチャさんは小さい頃からリーヤと一緒だったんですから、兄妹みたいに仲がよくてあたりまえです。そうです。兄妹みたいなものなんだから……気にしなくてもいい、はずですよね?
なんだろう。
僕が、まるで僕でないみたいな気がします。何か、別のものが僕の中に入りこんでいるかのような……。
ええ〜〜〜っい!
僕は……僕はチャチャさんが好きなんだ!
そして、リーヤは恋敵のうんぺっぺ野郎なんだ!
「チャチャさぁ〜〜〜〜〜〜ん! チャ、チャ、チャ、チャ、チャッチャさぁ〜〜〜〜〜〜〜ん!」
こうやって、叫んでいるときが一番、落ち着くんですよねぇ。
チャチャさん……僕は、僕は……。
*
「リーヤくぅ〜ん☆」
「ゲッ。マリンだ……」
ある日のお昼のこと。
僕たち、うらら学園バナナ組の教室に、甲高い叫び声とともにりんご組のマリンちゃんが飛び込んでくるなり、リーヤは狼に変身して、チャチャさんの後ろに隠れました。リーヤは、月がなくても変身できる狼男なのです。
しかし、リーヤが狼男であることを知らない(と云うより認めない)マリンちゃんは、例によって例のごとく、チャチャさんに突っかかってきます。
「ちょっと、チャチャ。あんた、またリーヤくんをどっかに隠してるわね!」
「隠してなんかないもん! リーヤはここにいるもん!」
「どこにリーヤくんがいるって云うのよぉ。早くリーヤくんを出しなさいったらぁ!」
「マリンさん、リーヤならここに……」
「あ、よせ! しいねちゃんの馬鹿……」
見かねた僕は、狼リーヤをむんずとつかむと、マリンちゃんに差し出したのですが……
「このバカ犬のどこがリーヤくんだっていうのよっ!」
マリンちゃんは狼リーヤを思いっ切り蹴飛ばしました。当然のごとく狼リーヤは、壁に激突……。
そしてマリンちゃんは、教室中を舐めるように見回したあと、「また来るわよ!」という捨てゼリフを残して出ていきました。
その姿を見送ったあと、ふと、チャチャさんを見ると、床に伸びている狼リーヤのそばで、「リーヤ、大丈夫?……」と、心配そうな瞳で見つめています。
狼リーヤはといえば、今日は、よほど打ちどころが悪かったらしく、まだ伸びたまま、ピクリとも動きません。
以前の僕なら、少しくらいは心配してやりますが、やはり「これで邪魔者がいなくなったぁ〜」と喜んだことでしょうが……
なんだか
無性に
悲しいのです。
なぜでしょう。
……リーヤ、早く起きてくれ。気付いてくれ。そして、いつものように、「しいねちゃん」と呼んでくれ!……
僕の中で、何だか僕ではない、何かが叫んでいるのが聞こえます。
……何が……いったい何が…………
僕は、うらら学園から、お師匠様の屋敷の僕の部屋に戻って考え込んでしまいました。とても、こんな状態でニャンコハウスに戻ることなんてできません。とても……。
もちろん、お師匠様には怪訝な顔をされてしまいましたが……。
*
僕の中で、何かが変わってしまったのです。何かが……。
チャチャさんにたいする想いは、最初に、あの運命的な出会いをしたときから、変わっていないことは分かっています。じゃあ……リーヤに対する想いは?
……………………
もしかして、もしかすると……。
あれは……チャチャさんとリーヤそして僕の三人が、ニャンコハウスで生活しながら、大魔王を倒しに行く旅の途中。
僕たちは、大魔王が送りこんでくる幾多の魔族と戦いながら、愛と勇気と希望とで、その難関を突破してきました。
そして……その中で、リーヤが頻繁に僕にひっついて来るのを、表面上は嫌な顔をしていましたが、内心、何だか嬉しかった、いや、気持ちよく感じていたのです。それまでは、本当にうざったく、嫌だったのに……。
いったい、何が僕を変えてしまったのでしょう。
いったい、何が……。
*
「しいねちゃん!」
僕が考えている最中、いきなり声がしたので振り返ると、そこにはリーヤが立っていました。
「リーヤ……どうして……」
「どうしてじゃないだろ、しいねちゃん。今日は学校が終わったらいきなり消えちまうし、チャチャもすっごい心配してたんだぞ」
「チャチャさんが?」
「そうだよ。いまは、なんか修業があるとかでセラヴィーとどっかに行っちゃったけどよぉ。ホントは、オレもついてきたかったんだけど、チャチャが『しいねちゃんの様子を見てきて』、って云うから、わざわざ見に来てやったんだ」
「そう……」
チャチャさんが僕のことを心配してくれたことは嬉しいけれど、何だか、僕はすっきりしなかった。
「じゃあ、リーヤは、チャチャさんが頼んだから来たくないのに来たんだ……」
頼むから云ってくれ。チャチャに云われなくったって来た、と。お前のことが心配だったと。云ってくれ!……僕の胸は激しい高鳴りをおぼえ、その返答を待っていた。
「ああ。チャチャの頼みだからな……」
……僕は、奈落の底に付き落とされたような衝撃を受け……気を失ってしまいました。
「……ねちゃん……いね……ん…………しいねちゃん!」
僕が目を開くと、超どアップのリーヤの顔が、僕をのぞき込んでいました。
僕がドキマギして何も云えないでいると、追い撃ちをかけるように、
「ホント、どうしたんだよ、しいねちゃん。何か最近、変だぞ」
「何でもない……何でもないんだ……」
「ならいいけどさ、やっぱし、しいねちゃんが元気ないと、その……何か、ヤだよ。何だかうまく云えないけど……」
「リーヤ……」
そういうリーヤの顔が、何だか、少し赤くなっています。そう。リーヤのヤツ、照れながらこのセリフを口にしているのです。それも……本心から、といった感じで……。
いま、分かった。
僕は……僕は、リーヤを愛してるんだ。
僕が、最初にチャチャさんと運命的な出会いをしたとき。僕が、チャチャさんを「かわいい」と思ったのは事実です。だけど、僕が本当に愛したのは、チャチャさんではなく、チャチャさんと一緒にいた、リーヤだったんだ! 僕は……僕は、リーヤを愛している!
「……リーヤ……」
「お、おい……しいねちゃん……」
僕は、リーヤの首に腕をまわすと、軽く目を閉じ、唇に唇を重ね、二人の唇が重なった瞬間、そっと薄目を開けました。リーヤが、驚きと困惑の目で、僕を凝視しています。僕は、口付けを続けたまま、くすっ、と微笑み、リーヤを解放しました。
「……はぁっ、はぁっ、はぁっ……い、いきなし、何すんだよ、しいねちゃん!」
解放したといっても、僕は、彼の首から腕を離しませんでした。そして、力ならものすごくあるはずのリーヤは、その腕輪から抜けようともせずに、荒い息遣いで僕に問うのです。
僕は、今度は声を立てて、くすっ、と微笑みました。
「僕は……僕は君を愛してるんだよ、リーヤ……」
そう云いながら僕は、ふたたび腕を引き寄せ、接吻しました。今度は、熱い口付けを……。
僕の舌がリーヤの口へ、そしてリーヤの舌が僕の口内を荒らしまわります。お互いの舌と舌、唾液と唾液が絡み合い、軽い鼻息がまた、興奮をそそります。ただただ、無言で唇を、互いをむさぼりあう僕とリーヤ……。
いつしか僕は絶頂を迎えたようでした。あまりの快楽に、失神してしまったのです。
リーヤは、僕が失神してしまったのにも数分は気付かずに口付けていたようですが、僕が失神してしまったのを知るや、僕が風邪をひかないように毛布を僕の上にかけた上で、物音も立てずにでていったみたいです。
「あいつ……いつもはがさつだけど、けっこういいとこがあるんだな……」
僕は、まさかこの光景を監視されていたとは少しも気付かずに、リーヤとの甘い接吻を思い出しながら、眠りについたのでした……。
*
その翌日。
僕がうらら学園に行くと、いきなり飛び出た影に腕を捕まれました。
「なに?」
僕がふと見ると、それは同級生のポピィくんでした。
「あ、ポピィくん、おはよう……どうしたの? いったい……」
「…………」
「……ポピィ、くん?」
「しいね、お前……やっぱり……」
そう云うなり、ポピィくんは、さっと走っていってしまいました。
昨日の一部始終を見られていたとは知らなかった僕は、最近、気になりつつあったポピィくんの様子がおかしいのが、まったく分かりませんでした。まったく……
【おまけ】 「しいね、お前は……お前は、ボクのことを好きなのかと思っていたが……リーヤのことを……チャチャならまだ許せるが、よりによってリーヤとは……許せない。リーヤ、しいねを誘惑したリーヤもだが、しいね、お前も……」
邪悪な天使、ポピィが、不敵な笑みをもらしつつ、ある計画を練っていたことは、誰も知らない…………
(続く……かもしれない)
……どうでしたか? とりあえず、この小説はこの続きを書いていないのですが……もしも読みたいよぉって人がいらっしゃいましたら
連絡ください。もしかしたら書くことがあるかもしれません。
なお、「おまけ」部分は、まいまいさんによってカットされてしまったので、本邦初公開になります(笑^^;)。まあ、読み切りだったら蛇足ですがね。
あ、それから。この中で、ポピィくんが出てきますが、実はこれを書いたとき、僕はポピィくんを知りませんでした。実際、「りぼん」本誌を読んでいないため、コミックスのみなので……初めてポピィくんのことを知ったのは「しいねちゃんネット」と同人誌でした(苦笑)。そんな中で書いたんで、ポピィくんの性格などをよく知らなかったため、中途半端になってしまいました。できれば、続けたい気もするなぁ。